メコン圏が登場するコミック 第2回   

本文へジャンプ

 

本書収録作品の

    主な登場人物

 

 

「ローマのモザイク」

・わたし

 (主人公の若い女性)
 ・マリオ・ピンナ氏

(ローマ在住イタリア人)

<著者の1973年のヨーロッパ旅行で、ローマへ行った時のことがベース>

 

 

「早春」

 ・工藤順子(主人公)

 ・杉浦礼子

 

 

「姉さん」

 ・ともこ(主人公)

 ・恵美子(ともこの姉)

 ・ともこと恵美子の母

 

 

「水の町」

 ・周三郎(主人公)

 ・ルイ

 ・政(ルイの父親)

 ・耕作

 ・周三郎の父親

 ・周三郎の兄

 ・小池(東京の学生)

 

 

「わたしたちの始まり」

 ・阿草久子(主人公)

 ・佐藤周一郎

  (久子が中学3年の

   時にクラスに編入

   してきた男の子)

 ・久子の父の姉

 ・久子の姉

 ・吉岡聡子(女子高の

   久子の同級生)

 ・吉岡真樹子

   (吉岡聡子の姉)

 

 

「星に住む人びと」

 ・岡崎郁子(主人公)

 ・郁子の父

   (岡崎時計店経営)

 ・郁子の母

 ・岡崎勝子(郁子の

  一番上の死んだ姉)

 ・平山(郁子と美大での

   友だち)

 ・吉岡聡子

  (郁子の高校時代の

  友人)

 ・寺島(吉岡聡子の結

  婚相手で、大学で日

  本の近代史を研究。

  自由民権運動も研究)

 ・村上(医者)


  

   「星に住む人びと」  

       

        著者 樹村みのり、

       1982年10月発行      

         秋田書店 【BONITA COMICS】

         

            

 

 

  
 本書「星に住む人びと」は、1964年春、中学2年(14歳)の若さで、作品「ピクニック」(1964年「りぼん」増刊春の号)でデビュー、以降も「シリーズ・ポケットの中の季節」「菜の花畑シリーズ」「海辺のカイン」「母親の娘たち」など、数々の傑作・話題作を発表してきた漫画家・樹村みのり氏(1949年生まれ)の短編集。主に1975年~1976年に発表した作品、計6編が収められている。

 

 本書の最後に収録され本書のタイトルにもなっている作品『星に住む人びと』は、「別冊少女コミック」1976年11月号に発表されたもので、10代後半の高校生から大学時代・大学卒業後の20代半ばまでにいたる主人公女性の迷い・悩みや成長が、ベトナム戦争、反戦運動、そして戦争の終結という時代を背景に描かれ、ベトナム戦争にまつわるシーンが数箇所登場し、時代背景だけでなく、ストーリー展開に効果的な意味をもたせている。

 

 著者自身、『「星に住む人びと」の中で、少し出てきたベトナム戦争は、1975年4月30日に終っています。このことをどうにか自分のマンガの中に入れたいと思っていたら、よいぐあいにこの作品のラストにおさまりました。・・・1949年生まれのわたしは、60年代をほぼ10代ですごし、70年代をほぼ20代ですごし -というふうに、その年代と自分の年代とが、ほぼ重なりあっています。同じ年の友人もみな年を重ねました。古い言葉ですが、”他人を知ることは自分を知ること” ーという言葉を今かみしめています。』と綴っているが、この作品は次のような文章で終っている。

 

 「まだ少年のような顔をした一人の解放軍の兵士があたりをうかがいながらサイゴンの大統領官邸に足を踏みいれるのをTV画面がとらえた。わたしたちが見ることのできたベトナム戦争のおわりはそんなふうにそっとだった。次の日わたしは外へ出て一番最初に言葉をかわしたい人のところへ向かうため午後の明るい町を歩いていった -1975年5月」

 

 この作品の主人公は、著者自身と同じ年齢設定の岡崎郁子という女性。ストーリー場面が1966年11月の時には、作品主人公は、絵をかくことが好きで臆病で暴力がきらい、どこにでもいる平凡な女子高校生。彼女の高校時代の生活の一場面が描かれているが、同級生たちと中国映画を見に行った帰りには、「ベトナム戦争ハンターイ! アメリカはアジアから出ていけェ」とシュプレヒコールをあげながら行進している一群の人たちに出くわしている。

 

 そして彼女は美大に入学。東大安田講堂闘争(1969年1月)のカットの後、南ベトナムでの米軍によるソンミ村虐殺事件を報じるテレビを家族とともに見るシーンが挿入されている。長らく忘れていた、第2次大戦直後にわずか5歳で亡くなった主人公の一番上の姉のことを、両親に詳しく聞く場面だ。ちなみにソンミ村での米軍による大虐殺事件は1968年3月16日に起こっているが、世界に報道されたのは1969年11月。

 

 本書に収録されている他の作品も、10代から20代半ば頃の女性を描いたものが多い。『早春』は、クラス委員をつとめるようなまじまな主人公の女性が、女子校の中学2年の2学期、派手な人たちのグループにいて目立った存在の女性と席がえで隣りに並ぶことになったことを機に芽生える友情と絶交、そして高校卒業後何年もたってからの二人の心の交わりといった、友達関係を描いた、誰にでも懐かしい思いがするだろう作品。 ”あのころわたしを悩ませていたことはたくさんあったけれど、とりわけ友人のことは大きな問題だったわ。最初の席が近かった 気のあった人たちといっしょにいることはそれはそれで悪くないこと でももっと何かほんとうに手ごたえのあるものを求めていたと思うの”という主人公にとって、”わたしが青春のはじめに出会ったいちばん魅力的な友だち、わたしのいちばん確かな”外”を始めて実感するシーンも良いし、その晩感激でなかなか眠れなかった主人公も初々しくて爽やかだ。

 

 『わたしたちの始まり』では、中学3年の時にクラスに編入してきた男の子に”異性のわたしが在(い)る”と感じた女性・阿草久子が主人公。その男の子は、無防備に不器用に、自分よりも確かに自分らしく反応する子であったが、その男の子を意識しながらも遠くからみつづけていた主人公の女子高校時代が描かれている。大学生の姉を持ち、社会・時代意識の高い同級生の吉岡聡子という女性が登場するが、別の作品『星に住む人びと』でも彼女と同一人物らしき女性が登場している。この作品にも、著者自身が高校生だった60年代後半の時代の空気や夢の熱が、大学生という吉岡聡子の姉を通じて描かれている。



                       も く じ  

 

       ■「ローマのモザイク」   「別冊少女コミック」 1975年2月号

       ■「早 春」          「りぼんデラックス」 1976年春の号

        ■「姉さん」          「別冊少女コミック」 1976年6月号

        ■「水の町」          「プリンセス」     1977年5月号

        ■「わたしたちの始まり」   「別冊少女コミック」 1975年9月号

        ■「星に住む人びと」     「別冊少女コミック」 1976年11月号