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「ゴルゴ13 略奪の森林」
【SPコミックス・シリーズ125「人質」所収】
著者 さいとう・たかを
2002年8月発行、リイド社
ISBN4-8458-0125-6
⇒さいとう・プロ公式サイト
本作品『略奪の森林』は、世界をまたにかけて活躍する狙撃のプロフェッショナル、ゴルゴ13(サーティーン)のSPコミックシリーズ第125巻「人質HOSTAGE」に収められている、主にカンボジアのジャングルを舞台にゴルゴ13の活躍を描く1997年10月作品。1997年6月、カンボジアの北西部のジャングルの拠点アンロンベンを中心にほそぼそと抵抗を続けていたポル・ポト派は、カンボジア政府への帰順交渉を巡って内輪もめを起こし、帰順に反対するポル・ポトは帰順推進派のソン・セン一族を皆殺しにするが、逆に派内で失脚、タ・モクに逮捕され、1997年7月にはアンロンベンの即席人民裁判で終身刑を言い渡される。またラナリット第一首相とポル・ポト派の「帰順合意」調印が行われる直前の1997年7月、フン・セン第二首相が武力で合意を阻止、ラナリットを追い出し単独で実権を握った。本作品はこうした歴史事実をモデルに書かれたフィクションとなっている。
本書ストーリーは、タイとの国境沿い、カンボジア北部を、伐採した木材を運ぶタイの製材所の運転手が大型トラックを運転中の場面から始まる。トラックの運転席のテレビでは、”同じカンボジア人民を大量虐殺したポル・サルが、ついに捕らえられ、裁判にかけられました。ポル・サルは政権を追われ、軍隊と共にカンボジアの森に逃げ込み、勢力を誇示していましたが・・・ついに、崩壊の時がきたのです!”とのニュースを報じていた。ここでいうポル・サルが実在のポル・ポトをモデルにしているのは明白で、テレビ画面には、1997年7月に世界に報道されたポル・ポトの人民裁判の映像と同じような絵が描かれている。
一方、日本のヤクザ関係の木材輸入商社が、カンボジアのゲリラと手を組みカンボジアの森林の銘木の輸入ルートを短期間で支配し、自社の取引ルートを奪われた日本の商社・村越商事は、カンボジアルートの独占を狙うべく、ポルサル派のゲリラとつるんでいるタイ人の役人を通じて、社長自らが直接現地で陣頭指揮を執るべく、タイ東部経由ゲリラ支配地域のカンボジアに入りゲリラと直接交渉に乗り出す。村越商事には単身カンボジアに入って木材取引を開拓拡大していた優秀な社員・只見がいたが、半年前にカンボジアの森で消息を断ち行方不明となっていたが、ポル・サルゲリラに惨殺されたと見られていた。
ゴルゴ13の方も、兄を殺したと思ったゲリラが憎くてその復讐を只見の妹から依頼され、カンボジアとミャンマーで発見された新種の牛を探していると動物学者風を装い、タイ東部からカンボジアのジャングルに単身で入り込む。しかし、村越社長をはじめとする村越商事のメンバー3名がポルサル派のゲリラに捕らえられ、その後ゴルゴ13も同じく捕らえられ、共にジャングルの地獄の拷問を受ける。このゲリラによるジャングルの地獄の拷問の方法はおぞましく凄まじいが、ゴルゴ13の拷問からの脱出の仕方がまたあざやかだ。
カンボジアの森林伐採と密輸、木材資源とゲリラの資金源といったテーマに加え、木材業を営み事業に失敗して自殺した只見の父親の話も挿入されて原木の卸しのハイリスクな商いの様子にも触れられている。また、本書の主舞台はカンボジア西部のジャングルではあるものの、プノンペンを舞台とし、ポル・ポト派の政府軍編入が正式に調印される予定の1997年7月6日の前日(7月5日)にフン・セン首相(本書ではフンミン首相となっているが)が起こしたクーデター、首都プノンペン市街戦という1997年7月に起ったカンボジアの政変の様子を紹介するシーンも盛り込まれている。
本書は、カンボジア政変、ポルポト人民裁判が実際に起こった1997年7月の3ヶ月後の1997年10月作品であるが、その後1998年4月15日に、ポル・ポトが死亡(病死と伝えられたが、殺されたのか自殺したのか、その死因は謎のまま)。1998年7月26日には5年ぶりの総選挙が行われ、1998年11月30日、新政府が樹立された。また本書ではポル・サル派の生き残りを指揮している裏のリーダーが登場するが、ポル・ポト派については、1999年3月、残っていた指導者タ・モクがカンボジア政府に逮捕され、旧・ポル・ポト派が消滅している。
SPコミックシリーズ 『ゴルゴ13シリーズ(125)・人質』 目次
■「人質HOSTAGE」 <1997年6月作品>
■「血まみれの刑務所」
<1997年12月作品>
■「略奪の森林」
<1997年10月作品>
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