メコン圏が登場するコミック 第15回   

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「加治隆介の議」

  第6巻、第7巻

 

 

 ◆主な登場人物等

 (第6巻・第7巻の一部

  に限定)

 

・加治隆介

  (主人公、国会議員)

・山本真喜男

 (加治隆介の後援会長)

・山本剣吉

  (山本真喜男の息子)

・山本トミ子

  (山本剣吉の妻)

・山本俊幸(剣吉の

  小学3年生の長男)

・露木(外務省事務官)

・赤石功典(UNTAC代表)

・染谷(フリーカメラマン)

・西(鹿児島錦江クラブ)

・クミール

 (パルパト派の少年兵)

・バンコク市立総合病院

 の医者

 

・渦上三郎(民政党議員)

・敬子(田名網の女将、

  渦上の愛人)

・稲川欽蔵(相場師)

・谷崎健吾

 (国会議員、加治元春

 の元第一秘書)

・井原七郎総理

・浅海恒太郎代議士

 (大臣経験のある大物)

・筒見修(社会平和党)

・倉地潤

 (加治隆介の友人で、

 外務省のエリート高官)

・大森陽一郎

 (加治隆介の友人で、

 大日新聞政治部)

・加治由紀子

 (加治隆介の妻)

 

 

 

◆ストーリー展開場所

(第6巻・第7巻の一部

 に限定)

 

・カンボジア

  プノンペン、タケオ

  カンポト、コンポンソム

・日本

  東京、鹿児島、熱海

・タイ

  バンコク

 

   第15回
    
   「加治隆介の議」
 

              【ミスターマガジンKC】

      著者 弘兼憲史(ひろがね・けんし)

       第6巻(1994年3月発行)、講談社     

          

         

          

 

 「加治隆介の議」は、講談社の男性コミック誌「ミスターマガジン」(2000年初に廃刊)に、1991年1号から1998年23号まで、約8年間にわたり連載された本格政治漫画。コミック単行本としては、講談社より1992年1月スタートのミスターマガジンKCの第1号として、「加治隆介の議」の第1巻が刊行され、1999年1月に、最終巻となる第20巻が刊行された。著者は、代表作「島耕作」シリーズをはじめ、「人間交差点」「黄昏流星群」などのシリーズの著者である1947年(昭和22年)生まれの弘兼憲史(ひろがね・けんし)氏。

 

 主人公の加治隆介は、一流商社、丸講物産の食料品本部農産部のエリート課長で、東大法学部卒の39歳、元建設大臣、加治元春の次男でもあったが、父・加治元治の死を契機に政界入りを決意。会社を辞め、父の遺志を継ぎ、鹿児島から出馬し、衆議院議員となる。議員となった加治隆介は、超党派の政策グループ「桜嵐会」を設立。その後、いろいろな経緯を経て、最後は総理大臣になったところで話は終わりとなり、最終巻の最後の章は、「議その175:日本の議」で終わっている。詳細は次のとおりだが、「加治隆介の議」全20巻は、175の章と加治隆介の学生時代の話の番外編から成り立っている。

 

 政治家としての加治隆介がほぼ全編を通して描かれ、永田町をはじめ日本の政界が本書ストーリーの主舞台であるが、全20巻中、第6巻と第7巻は、カンボジアがストーリー展開舞台となっている。第6巻の「議その45:文民警察官」では、カンボジアで日本人初の文民警察官の犠牲者が出る。そして1年前に国会議員に初当選したばかりだが、防衛問題に関して国連と如何に関わるかという問題を重視する加治隆介は、カンボジアでの総選挙が終わるも今だ危険なカンボジアにUNTACの視察に出かける。プノンペンに到着した加治隆介は、UNTAC本部、タケオの日本施設大隊を訪問した後、コンポンソム(シアヌークビル)のボランティア事務所に向かう途中のカンポト州の国道2号線沿いで共産ゲリラグループに拉致されてしまう。

 

 「議その47:カンボジアへ」で始まる加治隆介のカンボジアの旅は、共産ゲリラのアジトに監禁され処刑直前の危機からカンボジアのジャングルを抜ける壮絶な脱出を経て、タイの病院に運ばれ、「議その55:『深夜の訪問』」で終わっている。本書では、文民警察官が殺害された直後のテレビ公開討論会、加治隆介がカンボジア行きを考える段階、カンボジアでUNTAC代表との会談の時、加治隆介を監視する共産ゲリラの少年兵との会話の場面、カンボジアより帰国直後などの各シーンで、加治隆介がPKO、国連平和活動、日本の外交に対しどういう考えを持っているかや、カンボジアの政情や抱える問題が紹介されている。

 

 尚、本書では、カンボジアで亡くなる文民警察官は、鹿児島県警の山本剣吉警部補で、山本警部補の父親が、国会議員の加治隆介の後援会長でもあった、という設定になっているが、現実に起こった事件は、1993年5月4日昼過ぎ、タイ国境に近いカンボジア北西部のバンテアイミアンチェイ州アンピル村で、同村に駐在している日本人文民警察官がパトロール中に武装集団に襲われ、高田晴行・岡山県警警部補(33)が亡くなった。また作品ではボリビアの兵士の護衛となっているが、現実の事件では、UNTACオランダ海兵隊部隊の護衛を受けていた。

 

 日本の政情が大事なときにカンボジアに行く事に周囲から反対されていた加治隆介が、カンボジア行きを決断するのは、一ノ関鮎美という女性がボランティアでカンボジアのタケオ駐屯地で働いている事を知ったからであるが、この一ノ関鮎美という女性は、加治隆介の商社時代の部下で恋愛関係にあった女性だ。議その1から昼と夜で最初から登場する加治隆介にとって重要な女性だが、加治隆介が国会議員になる際に劇的な別れ方をしていた女性で、カンボジア・タイ編でも彼女の存在がドラマチックな演出を飾っている。「加治隆介の議」のその後も続く長いストーリー展開で、一ノ関鮎美がばったり登場しなくなるが、また最後に悲しく切ない演出が用意されている。

              『加治隆介の議』 (弘兼憲史 著、講談社)

 ミスターマガジンKC-01

 「加治隆介の議」 第1巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1992年1月発行

   

 ミスターマガジン1991年No.1~

 No.8掲載分を収録

●議その1   「2508便 10時」

●議その2   「最終版 1時30分」

●議その3   「死亡時刻 22時15分」

●議その4   「搭乗券2枚」

●議その5   「出馬要請」

●議その6   「鮎美の告白」

●議その7   「元春の手紙」

●議その8   「いざ、出帆」

 ミスターマガジンKC-12

 「加治隆介の議」 第2巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1992年5月発行

   

 ミスターマガジン1991年No.9~ No.16掲載分を収録

●議その9   「もつ鍋作戦会議」

●議その10   「孤軍奮戦」

●議その11   「公開討論会」

●議その12   「息子よ!」

●議その13   「投票日」

●議その14   「15票の差」

●議その15   「公職選挙法第97条1項」

●議その16   「今デモ・・・好キデス」

 ミスターマガジンKC-28

 「加治隆介の議」 第3巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1993年1月発行

●議その17   「覚悟の上」

●議その18   「錦江クラブ解散」

●議その19   「睡眠誘導剤」

●議その20   「まさか・・・?」

●議その21   「桜嵐会設立」

●議その22   「波紋」

●議その23   「日米の差」

●議その24   「下薗を探せ」

●議その25   「疑惑の構図」

 ミスターマガジンKC-36

 「加治隆介の議」 第4巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1993年5月発行

   

 ミスターマガジン1992年No.17~ 

 1993年No.1掲載分を収録

●議その26   「帰国」

●議その27   「囮」

●議その28   「接近遭遇」

●議その29   「盗聴」

●議その30   「追いつめる」

●議その31   「自由の女神」

●議その32   「寝耳に水」

●議その33   「追及の火の手」

●議その34   「再会」

 ミスターマガジンKC-46

 「加治隆介の議」 第5巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1993年11月発行

   

 ミスターマガジン1993年No.2~ 

 1993年No.10掲載分を収録

●議その35   「総理会見」

●議その36   「総理辞職」

●議その37   「談合に異議あり」

●議その38   「決起」

●議その39   「先客」

●議その40   「大逆転」

●議その41   「役者が上」

●議その42   「首班指名」

●議その43   「殺人教唆」

 ミスターマガジンKC-54

 「加治隆介の議」 第6巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1994年3月発行

   

 ミスターマガジン1993年No.11~ 

 1993年No.19掲載分を収録

●議その44   「新党への道」

●議その45   「文民警察官」

●議その46   「平和のコスト」

●議その47   「カンボジアへ」

●議その48   「タケオ駐屯地」

●議その49   「政変」

●議その50   「捜索不発」

●議その51   「少年兵士」

●議その52   「不在選挙」

 ミスターマガジンKC-64

 「加治隆介の議」 第7巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1994年7月発行

   

 ミスターマガジン1993年No.20~ 

 1994年No.4掲載分を収録

●議その53   「底なし沼」

●議その54   「幻の日章旗」

●議その55   「深夜の訪問」

●議その56   「浅海の決断」

●議その57   「総理の座」

●議その58   「首班指名」

●議その59   「組閣」

●議その60   「閣僚名簿」

●議その61   「それぞれの思惑」

 ミスターマガジンKC-78

 「加治隆介の議」 第8巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1994年12月発行

   

 ミスターマガジン1994年No.5~ 

 1994年No.13掲載分を収録

●議その62   「官房長官の任務」

●議その63   「もう1人の剛腕」

●議その64   「大雪の東京」

●議その65   「殉職」

●議その66   「クーデター」

●議その67   「総理の椅子」

●議その68   「最悪のシナリオ」

●議その69   「危機管理」

●議その70   「危機管理②」

 ミスターマガジンKC-87

 「加治隆介の議」 第9巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1995年4月発行

   

 ミスターマガジン1994年No.14~ 

 1994年No.23掲載分を収録

●議その71   「第六の選択」

●議その72   「ロンドンへ」

●議その73   「拿捕」

●議その74   「経済制裁」

●議その75   「国益優先」

●議その76   「発射用意」

●議その77   「集団的自衛」

●議その78   「青杉のシナリオ」

●議その79   「李日成主席死去」

●議その80   「和平の陰に」

 ミスターマガジンKC-99

 「加治隆介の議」 第10巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1995年8月発行

   

 ミスターマガジン1994年No.24、 

 1995年No.1~No.8掲載分を収録

●議その81   「人質返還」

●議その82   「逆風」

●議その83   「心変り」

●議その84   「誰と寝ようと」

●議その85   「斜く陽」

●議その86   「対峙する志」

●議その87   「平たく言えば好かれていない」

●議その88   「敗北感」

●議その89   「外交こそダイナミズム」

 ミスターマガジンKC-116

 「加治隆介の議」 第11巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1996年1月発行

   

 ミスターマガジン1995年No.9~ 

 1995年No.17掲載分を収録

●議その90   「リンダ・シモンズ」

●議その91   「124ヵ国の賛同」

●議その92   「薩摩隼人とヤンキー娘」

●議その93   「顔の見えない国」

●議その94   「手をとり合って」

●議その95   「収穫」

●議その96   「アメリカとの距離」

●議その97   「いろいろな真実」

●議その98   「核と木剣」

 ミスターマガジンKC-124

 「加治隆介の議」 第12巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1996年4月発行

   

 ミスターマガジン1995年No.18~ 

 No.24、1996年No.1掲載分を収録

●議その99   「絶対安全?」

●議その100   「核実験をめぐる外交」

●議その101   「王手」

●議その102   「ホワイトハウスからの打電」

●議その103  「獅子身中の虫」

●議その104  「官邸事務員の恋」

●議その105  「知る権利」

●議その106  「ノーサイド」

 ミスターマガジンKC-138

 「加治隆介の議」 第13巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1996年9月発行

   

 ミスターマガジン1996年No.2~ 

 1996年No.11掲載分を収録

●議その107  「APEC大阪会議」

●議その108   「中国と台湾」

●議その109  「盗聴」

●議その110  「リーダーシップ」

●議その111  「APEC閉幕」

●議その112  「公的資金導入止むなし」

●議その113  「暴力団」

●議その114  「加治たたき」

●議その115  「エジキ」

●議その116   「世論誘導」

 ミスターマガジンKC-154

 「加治隆介の議」 第14巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1997年2月発行

   

 ミスターマガジン1996年No.12~ 

 1996年No.19掲載分を収録

●議その117  「韓国へ」

●議その118   「軍事境界線」

●議その119   「ダブルデート」

●議その120   「Keyの行方」

●議その121  「北へ・・・!!」

●議その122  「AM8:30の花火」

●議その123  「犠牲者たち」

●議その124  「喉にささった小骨」

 ミスターマガジンKC-169

 「加治隆介の議」 第15巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1997年6月発行

   

 ミスターマガジン1996年No.20~ 

 No.24、1997年No.1,2掲載分を収録

●議その125  「チャレンジ・アゲイン」

●議その126   「候補者の条件」

●議その127   「日本の為とは!?」

●議その128   「討論会(ディベート)」

●議その129  「開票」

●議その130  「議員バッヂの重み」

●議その131  「首班指名」

 ミスターマガジンKC-178

 「加治隆介の議」 第16巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1997年9月発行

   

 ミスターマガジン1997年No.3~ 

 No.8、1997年No.11掲載分を収録

●議その132  「AM10:00の記者会見」

●議その133   「組閣」

●議その134   「波乱のスタート」

●議その135   「老兵は消えさるのみ!!」

●議その136  「安全保障会議」

●議その137  「安全保障会議の本音」

●加治隆介の議 番外編

          「加治隆介の青春」

 ミスターマガジンKC-193

 「加治隆介の議」 第17巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1998年1月発行

   

 ミスターマガジン1997年No.9~ 

 No.10、No.12~18掲載分を収録

●議その138  「岩国の意見」

●議その139  「沖縄の声」

●議その140  「再会」

●議その141  「スキャンダル」

●議その142  「スクープ」

●議その143  「外遊」

●議その144  「シーレーン」

●議その145  「撃沈」

●議その146  「日米共同行動開始」

 ミスターマガジンKC-206

 「加治隆介の議」 第18巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1998年5月発行

   

 ミスターマガジン1997年No.19~ 

 No.24、1998年No.1~No.3掲載

 分を収録

●議その147  「膠着状態」

●議その148  「ピンポイント」

●議その149  「F/A-18出動!」

●議その150  「兵装発射!」

●議その151  「祖国とは!?」

●議その152  「紛糾」

●議その153  「現場の本音」

●議その154  「命の重み」

●議その155  「So Long」

 ミスターマガジンKC-219

 「加治隆介の議」 第19巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1998年9月発行

   

 ミスターマガジン1998年No.4~ 

 No.12掲載分を収録

●議その156  「発覚」

●議その157  「辞任」

●議その158  「混乱」

●議その159  「犠牲者」

●議その160  「謀略」

●議その161  「新党結成」

●議その162  「サクラサク」

●議その163  「総選挙」

●議その164  「開票」

 ミスターマガジンKC-230

 「加治隆介の議」 第20巻

 

   弘兼憲史 著、講談社

   1999年1月発行

   

 ミスターマガジン1998年No.13~ 

 No.23掲載分を収録

●議その165  「総理大臣の椅子」

●議その166  「決戦投票」

●議その167  「ホンネ外交」

●議その168  「対ロ外交」

●議その169  「対中国外交」

●議その170  「意外な再会」

●議その171  「爆弾発言」

●議その172  「混迷」

●議その173  「新党首誕生」

●議その174  「嵐の中の船出」

●議その175  「日本の議」

           作者のことば

 第1巻

   文明国と呼ばれる国の中で、日本ほど政治家のイメージが悪い国は他にないでしょう。恐らく総ての政治家が金権、

   汚職のイメージと重なるからでしょうが、実際にはそうでない国会議員の方が、はるかに多いのも事実です。ことさら

   政治家のマイナス面ばかりをあけぐらうのではなく、真摯な一面も過不足なく公平に描いてゆきたいと思っています。

 第2巻

   国会議員のすべき仕事は次の4点だと思います。国防、外交、教育、そして経済政策と極端に言えばこれ以外の

   ことは地方議員の仕事だと言えましょう。しかし選挙に於いてはこの4点を掲げていたら落選するというのが現実です。

   残念ながら地元利益を唱えなければ当選出来ないということは、我々選ぶ側にもかなり問題があるのではないでしょ

   うか。

 第3巻

   日本社会は今、歴史上始まって以来の政治家不信におちいっています。永田町の上空には暗雲がたちこめ、国会

   議事堂がまるで魑魅魍魎の棲む伏魔殿のようにも思えてきます。しかし国民が永田町に対して、こういうイメージを

   持つことは決していいことではありません。一刻も早くこの暗雲を払拭してくれる政治家が登場することを願って、一足

   先に「加治隆介」を永田町に送り込みました。今後の活躍を期待して下さい。

 第4巻

   『加治隆介の議』第4巻の準備をしている最中に、金丸信前副総裁逮捕のニュースが飛び込んできました。真面目な

   国会議員を主人公にして描いている私にとって、こういう政治家の為に、日本の政治全体が腐敗しているように思われ

   るのは甚だ残念です。これを機に、加治隆介のような政治家がどんどん現れてくれることを切に願います。

 第5巻

   政治改革は今後取り組まなければならない重要課題のひとつではありますが、飽くまでも政治家のあり方を問うことで

   あって、日本の命運を決定するような重要課題ではありません。大切なことは今後日本が世界とどう関わってゆくか、

   それによって日本の経済をどうするのか、この2点を処理出来る政治家を我々国民が選ぶことだと思います。

 第6巻

   訪米した細川首相が、クリントン大統領と合意できず、物別れのまま帰国する、という”事件”が起きました。これは、米

   国が日本のことを「言いなりになる弟分」として見るのをやめた、ということでしょう。日米の対立に関する国際世論も米

   国支持が増えているようですし、「日本も、わがままばかり言ってられないぞ」というのが現在の私の心境です。

                                                     (1994年2月)

 第7巻

   日本は現在連立政権というシステムをとっておりますが、このシステムがいかに脆弱なものかということは誰の目にも

   明らかです。穏健なる多党制といっても、長年反目しあった者が手を握りあっているわけですから、野合とみられてもし

   ようがないでしょう。強いリーダーシップを持つ人間が現れない限り、政局は出口を求めて迷走し続けるしかないのです。

                                                     (1994年2月)

 第8巻

   政治に優先順位があるとすれば、第一に挙げられるのはやはり平和(防衛)でしょう。次に経済活動が来て、次に民主

   主義ということになるでしょうか。日本は経済活動と民主主義は達成していても、その前段階である平和(防衛)に対する

   構えがとても希薄です。政治家も国民も、日本は決して安全地帯に存在しているのではないということを自覚しなければ

   ならないのではないでしょうか。

 

 第9巻

   日本人の最も欠落している意識のひとつに国防(危機管理)があります。長年、日米安保条約の下に守られてきた平和

   の為に、国防感覚がマヒして、平和を当然のように受けとめ、ひとたび自衛隊という言葉を口にするだけで軍国主義者の

   レッテルを貼りたがる日本の風潮は何とも残念です。自衛隊は戦争を防いで平和を維持するために存在するのですから。

 

 第10巻

   政界再編という旋風が永田町に吹き渡り、様々なグループの合従連衡がくり返されてきた。その結果出来あがったのが

   現政権であるが、自社さ連立という極めて脆弱な基盤の上に立つ政権であるために、今後更に組み合わせが変わって

   ゆくだろう。社会主義というイデオロギーが崩壊したために、明確な対立軸がなくなって、国民は何を基準に選んでいいの

   かわかりにくくなった。強い理念を堂々と言える政党の出現を望む。

 

 第11巻

   米ソの対立がなくなった冷戦後の世界で今一番問われていることは、世界の安全を誰が守るかと言うことでしょう。東側

   の大国がいなくなって、残念ながら世界のいたるところで紛争が増えてきました。この時点で、もっとも頼りにすべき組織

   が国連の安全保障理事会でしょう。ひとつの紛争を、世界中の国々が力を合わせて押さえようという集団安全保障の時

   代になってきたということですね。日本も、もっと国連外交に力を注ぐべきだと思います。

 

 第12巻

   極東アジアが不穏な空気に包まれています。北朝鮮の核疑惑、南進、中国の核実験、台湾海峡の緊張等、日本は決し

   て安全な地域に位置しているとは言えません。ここにきて日米安保条約の重要性を再確認する必要が出て来たと言える

   でしょう。沖縄県民が基地を負担と感じているのなら、積極的に他県に移転する施策を考えるべきです。日米安保条約は

   日本の防衛にとどまらず、現時点ではアジア全体の平和と安定の為に必要不可欠なものなのですから。

 

 第13巻

   今、国民は政治家に対して不信感を持っています。特にお金が絡むスキャンダルに対しては敏感に反応して、責任を追

   及します。それはそれで当然のことですが、日本人はあまりにも政治家の価値を”クリーンさ”だけで判断しすぎてはいな

   いでしょうか。今回の巻で、加治隆介は、国民の多数の意思で辞職に追い込まれます。つまり有能な政治家を政界から

   失うわけですから、これは国益の大きな損失と言えるでしょう。クリーンだけで当選した政治家が増えても、日本はよくな

   りません。

 

 第14巻

   韓国と日本は隣国同士でありながら、ある側面では良好な関係とは言えません。これはもちろん過去の歴史に於ける度

   重なる日本の侵略行為に起因するものなのでしょうが、その歴史を認識した上で、一刻も早く両国の関係を修復したいと

   心から願います。この作品を描くにあたって板門店その他を取材しましたが、その際お答えにくい質問にまで丁重に対応

   して下さった南北統一関係の省庁の方々、ジャーナリスト、そして出版社の方々には深く御礼申し上げます。カムサハム

   ニダ。     弘兼憲史

 

 第15巻

   政治家は選挙に負ければ”ただの人”になります。従って日頃の政治活動と平行して、選挙対策としての地元涵養をしな

   ければなりません。ここが辛いところで、国の為にがんばってばかりいると落選するということになります。加治隆介のよう

   に国政一本で活動出来る政治家は極めて希で、残念ながら国政そっちのけで地方を向いている議員が極めて多いという

   のが現実です。ここは、何とかバランスをとってやっていただくしかありませんね。

 

 第16巻

   自衛隊を蛇蝎の如く嫌う人達がいます。このことばを口にするだけで、軍国主義者のレッテルを貼りたがる人もいます。そ

   の人達は自衛隊がなくなり、日本から米軍基地がなくなれば平和が来ると信じている人達です。しかし現実は全くその逆

   で、戦後50年日本が平和でいられたのは、自衛隊、米軍、そして日米安保条約のおかげです。平和を希求するなら、抑

   止力としての軍隊が必要なのだということを、我々日本人は強く認識すべきです。    <弘兼憲史>

 

 第17巻

   日本の自衛隊の軍事力は、量は少ないけど能力的には想像以上に大きいのです。アジアでは勿論最強だし、世界でも

   2番目か3番目に位置づけられるといわれています。この軍事力を保有する日本は、世界に対して軍隊を持っていないと

   広言しています。自衛隊はあるけど軍隊はないという詭弁を使っています。これを他の国は何と思うでしょうか。もういい加

   減こういうごまかしはやめようではありませんか。日本は軍隊を保有する、但し侵略の為には使わないということを憲法に

   明記すべきでしょう。     <弘兼憲史>

 

 第18巻

   プルトニウムを積んだ運搬船がテロリストに乗っ取られるという設定で、この巻の話は進みます。一見、奇想天外な設定

   に思われますが、実は現実に十分起こりうることなのです。実際は「あかつき丸」という船が運搬にあたっていますが、航

   路を公開しないのはテロ対策だし、船の中には乗っ取りに備えて海上保安庁の保安官が乗りこんでいます。日本国民は

   長い間、平和というぬるま湯にどっぷりつかっていたために、危機管理に対する関心が高くありません。世界は想像以上

   に危険地帯が広がっていることを認識する必要があると思います。    <弘兼憲史>

 

 第19巻

   少し前の一連の証券スキャンダルで、政界財界双方に数名の死者が出てしまいました。コトの成り行きは別にして、亡く

   なった方個人にとっては、大きな流れの犠牲になったということで大変不幸なことでした。政治とカネは、古今東西切って

   も切れない関係ですが、それはひとえに政治=権力という考えがあるからで、その意識を政治家のみならず、我々国民も

   変えない限り、この種のスキャンダルは永久に無くならないでしょう。

 

 第20巻

   連載を始めて約8年間、この巻をもって「加治隆介の議」は完結致します。思えばこの8年間、日本は政界、財界ともに激

   震の時代であったと言えるでしょう。小選挙区制の導入、自民党一党支配の終焉、自社連立政権、日本社会党の消滅、

   PKOによる自衛隊海外派遣、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)問題、バブルの崩壊と経済不況等、枚挙にいとまがあ

   りません。作者としてはネタ切れすることもなく、とてもいい時に、政治漫画を描くことが出来たと思います。加治隆介の主

   張には、私個人の私見がかなりはいっておりますが、問題提起と捉えて読んでいただければ幸いです。 <弘兼憲史>