世界一等旅行シリーズ 第3弾
『世界一等旅行・タイ』
邱 永漢 監修
1989年4月、ザ・トラベル商会出版局
ISBN4−915727−03−3
本書は、”世界一等旅行”(First-class
World Travel)と題したシリーズ企画の旅行ガイドブックで、シリーズ第3弾としてのタイ編。本書の出版元は、海外・国内の旅行情報提供やセールスプロモーション支援業務を行なっている(株)ラテラネットワークの前身である(株)ザ・トラベル商会(1990年、創業20周年を機に社名を(株)ラテラネットワークに変更)で、1989年に刊行された。掲載旅行情報などは、1988年12月現在のもので、料金情報など既に時間が経ちすぎ、これからの旅行ガイドブックとしては参考にならない情報も少なくないが、読み物・資料などとして充分楽しめ使えるものが掲載されている。
本の体裁や表紙からは一見普通の旅行ガイドブックのようであるが、本書の面白い内容の一つは、第2部の「タイ通人(つう)の秘密話 素顔のタイ・スペシャル」と題した鼎談(トライアングル・トーク)が30頁にわたり収録されている点だ。タイ事情に詳しい人たちによる、生きたガイド的読み物が用意されている。タイ通人の3人とは、本書の監修者でもある邱永漢氏、嵐山光三郎氏、カノミタカコ氏。話は、タイの魅力から、タイ料理の話を中心に、現地の人の暮らしぶり、タイ王室、タイキックボクシング、メーサイの町、買物などと楽しく展開している。
タイ料理の話では、トム・ヤン・クン、ココナッツ、カレー、パン、スズムシ、ビール、豆腐、ナム・プラー、パクチー、プリック・キーヌー、麺類、建興酒家、屋台、シーフード、フカヒレ、デザートなどと、3人とも食好きのようで、非常に話が盛り上がっている様子だ。買物については、宝石、バッグや靴、瀬戸物、シルバーウェア(銀器)、チークの家具、ビルマの刺しゅう、中国の染付、香辛料、サフラン、蛇の皮、ショール、タイシルク、マットミー、ランの花、サンデーマーケット、」ジム・トンプソン、オリエンタル・プラザなどが話題に上っている。
このトークの中では、山岳民族の染織・手芸の調査のため何度もタイの山岳地帯を訪れているカノミタカコ氏の話はどれも大変興味深い。タイとの最初のかかわりについては、会談の冒頭で以下のように語っている。
”最初に行ったのは30年近く前です《この会談時は1988年12月》。私は芸大のピアノ科だったんですけど、クラスにタイの留学生が入ってきて、自然に仲良くなったんです。そのころ、タイから日本へ留学するというと、とても上流階級のお嬢さんです。その彼女が芸大を卒業して、バンコクでピアニストとしてデビューするのにジョイントを頼まれまして、それでタイについて行った、それが最初ですね。半年くらいいて、一緒に演奏活動していました。それから5年くらいして、王室の方も出席なさる大きなチャリティコンサートに呼ばれまして、そこで王様が作曲された曲を弾いたんです。その時に私のことを気に入ってくださって、以来王様のご一家と音楽上のおつきあいをしていたんです。だから、最初のうちは、山岳民族のことなど全然知らなかった。”
カノミ氏が最初にタイに行かれた頃の話からもバンコクの大変貌振りが知れる。バンコク市内ではクリークが通りごとにあって舟が往来していたし、現在は寂れているニューロードが、名前の通り一番新しい目抜き通りであったとのことだ。日本人も500人くらいしかいなくて、戦前からいる人たちも多かったという時代だ。
本書の第1部では、まさに本書のタイトルにふさわしく、”タイ一等世界"と題して、ホテルは一等気分を味わえるホテルのみ紹介されているが、ホテルだけでなく、グルメ、ショッピングの紹介もきれいなカラー写真満載で、ながめているだけで贅沢豪華な気分にさせられる。バンコク以外では、プーケット、パタヤ、チャアム、ホアヒンといった本格リゾート地が地図付きで取り上げられている。更にチェンマイについては、チェンマイフリータイムとしてチェンマイ市内の観光ガイドが、またバンコクフリータイムとしてバンコク市内の観光ガイドに加え、オリエンタル・リバー・クルーズとアユタヤ観光ガイドも掲載されている。このオリエンタル・リバー・クルーズは、豪華な観光クルーザーとデラックスバスを組み合わせたバンコクからの代表的な1日ツアープログラムで、チャオプラヤー川のクルージングと、船上でのランチ、古都アユタヤの遺跡群や夏の離宮バンパイン観光などが盛り込まれているものだ。
更に本書第3部"旅のノート”として、タイの旅に関わる色々な情報やデータに加え、「覚えておきたいタイ語(簡単な日常会話、知っておくと便利なタイ語、料理に関する言葉)」、「ホテル・レストラン リスト」
や「読んで味わうタイ」として22冊のタイに関する書籍名が、紀行・ルポ・エッセイ、歴史・社会・文化、民話・文学の分野から紹介されている。
本書の目次
第1部 タイ一等世界
バンコク
●ホテル ●グルメ ●ショッピング
●オリエンタル・リバー・クルーズ
●バンコク・フリータイム
プーケット
●ホテル ●グルメ
パタヤ、チャアム、ホアヒン
●ホテル ●グルメ
チェンマイ
●ホテル ●グルメ
●チェンマイのフリータイム
第2部 素顔のタイ
トライアングル・トーク
鼎談 タイ通人の秘密話 素顔のタイ・スペシャル 邱永漢 + 嵐山光三郎 + カノミタカコ
日本では味わえないタイの果物
第3部 旅のノート
出入国ノート
準備編、出発編、入国・現地編、帰国編
タイのお国事情
タイの年間行事と祝祭日
覚えておきたいタイ語
ホテル・レストランリスト
読んで味わうタイ