編訳者紹介
(本書紹介文より。2001年発刊当時)
君島久子
(きみしま・ひさこ)
1925年、栃木県生まれ。
中国文学・民族学専攻。特に中国諸民族の民間伝承について研究している。
国立民族学博物館名誉教授、中国中央民族大学名誉教授。
専門分野の著作のほか、『白いりゅう黒いりゅう』、絵本『王さまと九人のきょうだい』(赤羽末吉
絵)、『銀のうでわ』(小野かおる 絵)などがある。
メコン圏地域に居住する
少数民族の民話
(ここにあげた中国各族の人口は、1990年い行われた第4次全国人口調査の統計によるもの)
■ミャオ族
▼「岩じいさん」
ミャオ族は、貴州省を中心に湖南省や雲南省などにも住んでいる。人口はおよそ740万人。言語は苗瑤語族に属している。この話は、湖南省湘西土家族苗族自治州に住むミャオ族の間に語り伝えられているもの
▼「天女の里がえり」
君島久子氏が1980年以来数回にわたり訪問した貴州省の黔東南苗族トン族自治州の施洞で、直接ミャオ族の方から聞いた話
▼「人形の恋」
この話は、貴州省の黔東南苗族トン族自治州に住むミャオ族が伝承しているもの
■プミ族
▼「けものたちのないしょ話」
プミ族は雲南省の西北の山地に住み、人口は約3万人。言語はチベット=ビルマ語族に属している。もとは青海、甘粛、四川の三省が接する辺境の、高山寒冷地にいた遊牧民が南下したものらしく、13世紀以降、現在の地に定着したといわれている。
■イ族
▼「九人のきょうだい」
この話を伝えたイ族は、四川省凉山イ族自治州(大凉山)に、全体のおよそ三分の一が住み、そのほかは雲南省や貴州、広西などに居住している。人口は約658万人。言語はチベットービルマ語族に属しているが、イ語には6種の方言がある。13世紀頃文字もできる。唐代の8世紀には独立王国「南詔国」が成立していたが、その主な支配民族はイ族系の人々と考えられる。明、清時代には「ロロ」と呼ばれたが、解放後、自称をもとに「イ族」に統一。
■タイ族
▼「歌をうたうネコ」
この話を伝えたタイ族は、雲南省の南端、ミャンマーとの国境地帯のシプソンパンナに、一部は省の西部徳宏地区に住んでいる。人口は約103万人。言語はチワン=タイ語族に属している。
▼「サンジシャー物語」
この話を伝えているタイ族は、雲南省の西端、ミャンマーと国境地帯を接した徳宏タイ族ジンポー族自治州に住んでいる。タイ族人口の103万人のうち、多くは南のシプソンパンナに住んでいるので、この徳宏地区はその一部のタイ族ということになる。けれでも南の人々は白タイ、この地区の人々は黒タイと呼ばれ、体系や言語も多少異なっている。
■ジンポー族
▼「兄と妹」
ジンポー族は、雲南省の西端、ミャンマーとの国境地帯、徳宏タイ族ジンポー族自治州の山間部に住んでいる。人口はおよそ12万人。言語はチベット=ビルマ語族に属している。
▼「カエルの家出」
ジンポー族は、雲南省西部の辺境、徳宏地区に住んでいるが、国境を越えたミャンマーやタイやインドには、さらに多くの同じ民族が暮らしており、そこでは総称してカチン族と呼ばれている。
■ヤオ族
▼「娘とやまんば」
この話を伝えたヤオ族は、広西チワン族自治区に全人口の67%が住み、湖南、雲南、貴州などに散在している。人口はおよそ214万人。この話は広西の巴馬一帯で語られているもの。
■ヌー(怒)族
▼「妖怪の家」
ヌー族の人口はおよそ2万7千人と少ないが、古い歴史を持ち、唐代にはすでに怒江流域に暮らしていたといわれる。言語はチベット=ビルマ語族に属する。
■ペー(白)族
▼「小さな黄色い竜」
ペー族の人口はおよそ159万人、その60%が雲南省大理白族自治州に住んでいるほか、四川省や貴州省、そして湖南省にもわずかながら住んでいる。言語はチベット=ビルマ語系に属する。
■プーラン族
▼「巨人グミヤー」
この話を伝えたプーラン族は、中国の雲南省西南部、ミャンマーと国境を接したシプソンパンナの山岳地帯に住んでいる。人口は8万2千人余り。たいそう古い民族で、狩猟と採集の生活をしていたが、のち焼畑耕作を行うようになる。言語は南アジア語系モンクメール語族に属している。文字はなく、そのかわり、豊かで大らかな伝承をたくさん伝えている。