中国55の少数民族一覧

                       

                        書籍『中国55の少数民族を訪ねて』(白水社、1998年)から

 

ラフ族(拉祜) 雲南省西南国境付近の山岳地帯に居住し、人口約41万人。ミャンマー、タイなど広い地域に分布する。ラフ族の言語はシナ・チベット語系のなかのチベット・ビルマ語族のイ語派に分類されている。古来から文字は持たなかった。対歌や芦笙舞が盛んである。

ジノー族(基諾) 雲南省シーサンパンナ地域に集中的に居住し、人口約1万8千人。1979年に55番目の少数民族として認知される。イ族、ハニ族などのイ語系集団と同じく北方から南下したと考えられている。洪水神話が伝承されている。男は積極的に狩猟を行い、外出の際は弓矢か猟銃を携帯する。

トールン族(独龍) 雲南省西北の最深部、4千メートルを越える山々を望む、1〜2千メートルの高地に住む。人口の最も少ない民族のひとつで、約5千8百人、チベット系。女性の顔面入れ墨の身体装飾が見られる。世界の万物に聖霊が宿ると信じ、自然を崇拝する。

リス 雲南省西北部怒江岸の山地に居住し、人口約57万人。タイ、ミャンマーにも多く、チベット系。多くは漢族、ペー族、イ族、ナシ族などと雑居している。結婚、狩猟、家屋の新築などの際には弦楽器や口琴などを用いた歌と踊りを欠かさない。

ヌー族(怒) 雲南省西北部怒江流域の海抜3千メートルの高地に居住し、人口約2万7千人、チベット系。自然崇拝が多いが、19世紀末からキリスト教の布教が始まり、現在も信者が多い。長くリス族と雑居してきたため、ヌー族のほとんどがリス語を話す。

イ族(彝) 四川、雲南を中心に広く分布し、人口は約650万人、チベット系。武勇を尊ぶことで知られる。独自の文字を有し、祭祀や治療を行うシャーマンが存在する。四川省凉山イ族自治州はイ族が最も集中しているが、雲南などにも多く、地域ごとに独自の習俗を持つ。

ナシ族(納西) 雲南省を中心に四川、チベットにも分布し、人口約27万人、チベット系。トンパ教を信仰し、象形文字で多くの詩歌、宗教経典などを記録してきた。トンパ経は民族学の資料として価値が高い。また納西古楽を伝承しており、多種多様な楽器を有する。

ペー族(白) 雲南省大理を中心に人口約160万人、チベット系。古来王朝が栄えた地域。建築技術に優れ大理三塔は有名。仏教徒であると同時に、道教の影響も強い。村落の守護神「本主」の信仰にまつわる芸能が盛んである。

プミ族(普米) 雲南省西北部を中心に人口約2万9千人。チベット高原を故地とし、13世紀頃から南下し現在地に定住した。生活している地域は平均海抜が2千6百メートル以上の高原山岳地帯である。以前、ナシ族に支配されていた時期があった。

タイ族 雲南省シーサンパンナ及び徳宏地域に人口約102万人、タイ系。水稲耕作を行う。タイ暦正月の水かけ祭が知られる。祭礼には叙事詩や語り物を語る職業歌手「ザッハン」が活躍する。小乗仏教を信仰し、村落には多くの寺院がある。独自のタイ文字による文献が豊富で、タイ暦もある。

ブーラン族(布朗) 雲南省シーサンパンナ地域に居住し、人口約8万2千人。モン・クメール系で古来から文字は持たない。長い間、タイ族と混居してきたため、小乗仏教の信徒が多く、共通する楽器を用いる。ミャンマー東部にも数万人のプーラン族がいる。

ハニ族(哈尼) 雲南省南部に居住し、人口約125万人、チベット系。雨量豊富な亜熱帯地域で、有名なプーアル茶を産する他、段々畑での稲作、トウモロコシ、綿花などの栽培を行う。祖先崇拝の風習が盛んで、シャーマンも多い。

ワ族 雲南省西南国境地帯に居住し、人口約35万人。モン・クメール系でミャンマーにも同胞がいる。東南アジアと共通する「木鼓」の踊りと歌が伝承されており、祭りなどでは牛とともに重要な地位を占めている。宗教はアニミズム。

トゥー族(土) 青海省東北部に居住し、人口約19万人。モンゴル語系の言語を話し、チベット仏教を信仰する。声を高らかに響かせる「ホアル」など民歌の伝統を有する。もともとは遊牧や牧畜に従事していたが、明代あたりから農業に転じた。

ユーグ族(裕固) 甘粛省南部に集中的に居住し、人口約1万2千人、チュルク系。中央アジアのウイグル族と近親関係にあるとされるが、チベット仏教を信仰する。明代初期までは遊牧生活を維持していたらしい。今は漢語を日常的に使うが、ユーグ族のアイデンティティは強い。

サラ族(撒拉) 青海省の東部と甘粛省の一部に分布し、人口約8万7千人、チュルク系。祖先は中央アジアから移住したと言われ、敬虔なイスラム教徒である。農業を営み、小麦、ソバ、粟、ジャガイモ、大豆、唐辛子などを栽培し、また果樹園の経営にも優れている。

ボウナン族(保安) 甘粛省南部に居住し、人口約1万1千人。言語はモンゴル系、宗教はイスラム教。製刀技術に優れていることでも知られる。民謡が豊富で「ホアル」などの他、「宴席歌」という結婚式に歌われる民歌が有名である。

寧夏回族自治区をはじめほぼ中国全土に分布し、人口約860万人。唐の時代に移住したアラビア人、ペルシア人が源流で、イスラム教徒。回族はその歴史的形成が複雑で、長い間苦難に満ちた歴史を歩んできた。芸能の面でも地域差が著しい。

トンシャン族(東郷) 甘粛省南部に主として居住し、人口約37万人。モンゴル語系の言語を話すが、イスラム教を信仰する。歴史的に様々な民族的要素を取り入れて形成された民族らしい。古くから農業に従事してきた。彼らもまた「ホアル」などの民歌を愛好する。

モンゴル族(蒙古) 内モンゴル自治区を中心に広く分布し、人口約480万人。1947年に中国で成立した最初の少数民族自治区である。16世紀に導入されたチベット仏教とシャーマニズムが併存する。遊牧は減少している。歌と舞踊を愛好する民族である。

エヴェンキ族(鄂温克) 内モンゴル自治区、黒龍江省などに人口約2万6千人が居住。ツングース系で狩猟と遊牧を生業とするシベリア北方少数民族のひとつ。宗教上の特徴はシャーマニズムの存在である。シャーマンという言葉はツングース系の民族の間から源を発している。

ダフール族(達斡爾) 内モンゴル自治区などに人口約12万人が居住。かなり昔から定住生活を行う。モンゴル系民族に共通の習俗や文化を有し、シャーマニズムが盛ん。「ルリグレ」という女性集団舞踊は遠き日の狩猟生活を表しているという。

清朝の支配民族であった歴史からほぼ中国全土に分布し、人口は約985万人、ツングース系。漢族との同化が進んでいるが、近年、母語復興の動きも見られる。著名な文学者老舎を初め満族のなかから知識人が輩出している。

オロチョン族(鄂倫春) 内モンゴル自治区、黒龍江省などに人口約7千人が居住。ツングース系で、大、小興安嶺山脈の森林地帯で狩猟生活を行い、シャーマニズムが盛ん。オロチョンは、彼らの自称で「トナカイを駆使する人々」の意味であり、また「森に住む人々」を意味するとも言われている。

ホジョン族(赫哲) 黒龍江省に人口約4千2百人が居住し、中国における人口の最も少ない民族。ツングース系で、ロシア領内にナーナイ族として約1万人の同胞がいる。松花江、ウスリー江、黒龍江(アムール川)などでサケ類、マス類、チョウザメを捕り、優れた漁業技術を持つ。

朝鮮 東北3省を中心に約192万人が居住。古くから半島からの移住者があったが、日本の植民地支配の影響も大きい。稲作を東北地方で早くから始めた。人口千人当たりに占める大学教育以上を受けた割合は44.1%で、少数民族のなかでは最も高い教育レベルの民族のひとつに入る。

ドアン族(徳昂) 雲南省徳宏地域に人口約1万5千人が居住。モン・クメール系で民族的にはワ族に近いが、文化的には同地域のタイ族の影響を強く受け、楽器なども共通する。ミャンマーにも多く住む。主に農業に従事し、稲、トウモロコシ、イモ、綿花、茶を栽培している。

アチャン族(阿昌) 雲南省徳宏地域に人口約2万8千人が居住し、チベット系。タイ族と深い交流関係を持ち、小乗仏教を信仰する。主として農業に従事しているが、刀作りの優れた集団としても知られる。長い間タイ族や漢族と混住してきたため、ほとんどのアチャン族はタイ語と漢語を話す。

チンポー族(景頗) 雲南省徳宏地域を中心に人口約12万人が集住し、チベット系。地続きのミャンマーにも多く住み、カチン族として知られる。亜熱帯の山岳地帯に住み、近年は水稲が盛んになっている。武勇を貴ぶ民族で男は常に長い山刀を離さない。祖先を崇拝し、精霊を信仰する。

リー族(黎) 海南島に人口約111万人が居住し、モン・クメール系。衣装は大陸のワ族とほぼ同じである一方、フィリピンと共通する踊りを有するなど文化混淆が見られる。農耕を生業とする。リー族の女性にはビンロウを噛み、入れ墨をする伝統がある。

ショオ族 福建省、浙江省を中心に人口約63万人が居住。ミャオ・ヤオ系で貴州、湖南から移り住んだヤオ族の支族とされる。山地で焼畑耕作を行うが、近年、茶の栽培が多く見られる。「高皇歌」という歌はショオ族の発祥と移動を語った著名な史詩である。

プイ族(布依) 貴州省南部を中心に居住し、人口約254万人。チワン系の民族集団である。主として水稲耕作を行い、正月にはもちを食べる習慣がある。精霊を信仰し、祖先崇拝が盛んであり、シャーマンは宗教を司り、病気治療も行う。

スイ族(水) 貴州省南部を中心に人口約34万人が居住し、水稲耕作を営む。「水書」と呼ばれる独特の文字が巫師により伝承されている。周辺のトン族などに共通する「銅鼓」と呼ばれる独特の楽器を有する。スイ族の葬式儀礼は複雑で、死者がでた場合は特別な祭壇を設け、歌舞が捧げられる。

ミャオ族(苗) 貴州省をはじめ湖北、湖南、広西など広い地域に分布し、人口は約730万人。銀の飾りを多用した民族衣装、歌垣や竜船競渡などで有名。祭りには大小の芦笙が登場する。地域によって特色ある文化を有し、女性の服装によって、青ミャオ、花ミャオ、白ミャオに分類されることもある。

トン族(侗) 貴州省東南部を中心に湖南、広西の谷川沿いに人口約250万人が居住。農業、林業、養魚などを行う。歌が豊富で、美しいポリフォニーの伝統を有する他、「鼓楼」や「風雨橋」という独特な建築物も有名。宗教は精霊信仰が盛んである。

トゥチャ族(土家) 貴州、湖南境界の山地を中心に人口約570万人が居住。貴州省の一部に古代中国にあった古い仮面劇を伝承する地域があり、研究者などの注目を集めている。祖先を崇拝し、精霊を信仰する。かつて火葬を行っていたが、現在では土葬が多い。

コーラオ族(i佬) 貴州省北部を中心に人口約43万人が居住。ミャオ・ヤオ系で、大部分が海抜1千メートル以上の山地でミャオ族や漢民族などと混住する。トウモロコシを中心に稲、小麦、芋などを栽培している。一部では「かじ屋のコーラオ」と呼ばれるほど鉄細工も盛んである。

キルギス族(柯爾克孜) 新疆ウイグル自治区を中心に人口約14万人が居住。チュルク系イスラム教徒で、民族の多くは国境をはさんだキルギスタン共和国に住む。季節に応じて山中の放牧地を移動する遊牧生活を営む。伝承されている長編叙事詩「マナス」は数十万行からなり、世界的に有名である。

ウイグル族(維吾爾) 新疆ウイグル自治区を中心に人口約720万人が居住。チュルク系イスラム教徒で、タクラマカン砂漠周辺のオアシス低地で各種果実と穀類を栽培している。豊富な楽器を持ち、その情熱的な歌と踊りは広く知られる。長くアラビア文字を基本とするウイグル文字を使用している。

タジク族(塔吉克) 新疆ウイグル自治区に人口約3万人が居住し、中国では唯一のイラン系民族。海抜3千メートルを越えるパミール高原で半遊牧半定住の生活を営むイスラム教徒。鷹が英雄のシンボルであり、骨で作った笛を愛用し、鷹の舞いを模した踊りがある。

ウズベク族(烏孜別克) 新疆ウイグル自治区に人口約1万5千人が居住。チュルク系イスラム教徒で、民族の大半は旧ソ連ウズベキスタン共和国に住み、アフガニスタンにも130万人が住む。中国では都市部で貿易や教職などにつく裕福な家庭が多い。

タタール族(塔塔爾) 新疆ウイグル自治区に人口約5千人が居住。旧ソ連のタタールスタンに同胞が住む。外見は青い瞳の白人系、モンゴル系など様々だが、チュルク系イスラム教徒で、タタール語を軸に民族としての強い連帯感を持つ。中国領内のタタール族は商業と手工業に従事している。

カザフ族(哈薩克) 新疆ウイグル自治区を中心に人口約111万人が居住。チュルク系イスラム教徒で、アルタイ山中などで羊を中心とした遊牧を行うが、定住して農業を営む集団もある。遊牧の移動距離は年間を通して数百キロに達することもある。老若男女とも馬術に長ける。

シボ族(錫伯) 満族の一支族で、ツングース系。清朝時代に新疆地区の平定のため東北地方から多くの兵士と家族が徴用され、そのまま新疆ウイグル自治区に定住している人々と遼寧省に住む人々を合わせて人口約17万人。シボ文字は満州文字を改造して考案され、自分たちの言葉を守り続けている。

オロス族(俄羅斯) 新疆ウイグル自治区に人口約1万3千5百人が居住。帝政ロシア時代、ソビエト革命後にシベリア地方などから移住して住み着いたスラブ系のロシア人である。都市に居住するオロス族は運輸、手工業に従事し、農村地帯のオロス族は小麦などや園芸に携わっている。

ヤオ 広西チワン族自治区を中心に人口約214万が居住。「槃瓠」を先祖とする神話を伝承している。山地を渡り歩く焼畑耕作民として知られたが、現在では定住化が進んでいる。

ムーラオ 広西チワン族自治区に人口約16万人が居住。歌垣に代表される歌謡文化を今日に伝承している。彼らが住む地域は炭鉱が多く、現在、炭鉱労働に従事する者が増えてきた。近隣のマオナン族やスイ族と共通する文化を有する。

チワン族(壮) 広西チワン族自治区を中心に人口約1560万人を擁する、中国の少数民族中最大の人口を有する民族。漢族との交流が長く、黄、陸、莫、僮などの漢字姓を名のるのが特徴的である。歌によるコミュニケーションを大切にしてきた民族として知られる。

マオナン族(毛南) 広西チワン族自治区に人口約7万2千が居住。畑作を中心とする農耕民で、漢族とチワン族の文化的影響が強く、多神崇拝を行ってきた。願かけなどの祭礼は「師公」と呼ばれるシャーマンが執り行う。彼らは同じ姓を持つ者同士で村落を形成する。

キン族(京) 広西チワン族自治区の西南端に居住するベトナム人で、人口約1万9千人。トンキン湾の沿岸や島で、半農半漁の生活を営む。文化的には現在のベトナムの主要民族キンと共通する。豊富な口承文芸があり、「独弦琴」はキン族独特の楽器である。

チベット族(蔵) チベット自治区、青海省、四川省、雲南省、甘粛省など広範囲に居住する民族で、人口約460万人、チベット仏教を信仰する。チャンタン高原を中心に今なお遊牧生活を続ける人々と、ヤルツァンポ河流域に定住して農業を営む人々に分けられる。

メンパ族(門巴) チベット自治区東南部、インドとの国境地帯に人口約7500人が居住。集居地域である錯那県は中印国境紛争地域に当たり、外国人の入境はいっさい禁止されている。チベット仏教を信仰するが、ボン教信者もいる。口承文芸が豊富である。

ロッパ族(珞巴) チベット自治区東南部に人口約2322人が居住し、現インド領内にも同胞がいる。かつては狩猟も行っていたが、現在は農業に従事。チベット仏教が入っていない点で、メンパ族とは信仰や文化形態が異なる。

チャン族(羌) 四川省北部山地の岷江流域を中心に人口約20万人が居住。古代中国の西北部で勢力を誇った遊牧民、羌の一部が祖先とされる。チベット族、漢民族両方の文化的影響を受けながら、古代のシャーマニズムも保たれてきた。

高山 主に台湾の山地に住むマレー・ポリネシア系の民族で、かつて日本で高砂族と呼ばれた。中国政府の人口統計では福建省に3千人足らずとされているが、台湾では高山族として9部族32万人が認められている。ブヌン族の倍音唱法による合唱は特徴的である。