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「黄金の三角地帯 上・下」
著者:山本恵三
廣済堂文庫、1985年初版
文字通り、北タイ、北ラオス、上ビルマの黄金の三角地帯を舞台としたハードバイオレンス長編。主人公の中島国夫は、29歳の放浪冒険家。シンガポールで知り合い関係を持ったピアニスト天野美香の祖父である日本財界のボス、ヤマナコンツェルン会長の天野京三より、特別の依頼を受けた。その依頼とは、元陸軍参謀、そして元参議院議員でもあった辻政信を、黄金の三角地帯で探してもらいたいというものであった。
主人公の中島は、東京からシンガポール、バンコク、そしてチェンマイ経由で国境地帯に入り込むことになるが、各地で曰くありげな人物が次から次へと登場し、いろんな事件に巻き込まれていく。
ケシの大栽培地区で麻薬という黄金の資源をめぐって種々勢力間で、虚々実々の駆け引きと戦闘が繰り広げられる地域で、麻薬バンコクコネクションのフランス、チャイニーズ、東京ルートの各関係者や、旧国民党勢力や独自の地場麻薬軍団に加え、カレン軍等のビルマ少数民族反政府勢力がからむ。
主人公の周りにも、天野コンツェルン以外に、旅行代理店勤務の山口徳子、バンコクで貿易商を営む森口克豊、元神奈川県警警察官の竹田や大下などの日本人が色を添える。一時話題になった神奈川県警ではあるが、その神奈川県警で非常に優秀であったが、麻薬シンジケートを追い詰めている時に自分の身代わりで妻と娘を亡くし退官した竹田元警部、本書では重要人物としてずっと登場してくる。麻薬シンジケートに通じタイに逃亡していた部下の大下元警部補への復讐に燃えるのであるが、なかなか魅力的な男である。
薬物を使った異常なセックス描写が随所にでてくるが、ストーリーそのものは、単なる麻薬をめぐる利権争いだけにとどまらず、第2次世界大戦時、辻参謀と共にビルマ戦線を展開した天野京三の、底に潜む真の意図の大きさにより、更に興味深いものに仕上がっている。
国境地帯をめぐる麻薬や、カレン族等のビルマ少数民族による反政府活動というテーマ以外にも、秀才で陸軍参謀として活躍、終戦と同時にタイからラオス、中国、日本と3千里に及ぶ神業的潜行を成し遂げ、参議院議員になるも突如1961年(昭和36年)4月、ビエンチャン北方120km附近で消息を絶った実在の辻政信の人生とその最後の謎には、主人公の中島だけでなく我々も関心をそそられるテーマである。
同書関連ワード
黄金の三角地帯
アヘン、モルヒネ、ヘロイン、ケシ、旧蒋介石軍残党の国民党・KMT
シャン州独立軍、シャン同盟軍、ビルマ共産党、カレン民族解放軍
カクエイ軍、ロイモー地区のクン・サー派、コウカン地区のロウ・シンハン派
1964年ビルマ政府が一旦公認していたカクエイ軍の麻薬売買を禁止
ナラ、黒檀、紫檀など高級家具の原木の産地、白骨街道、遺骨収集団
国境警備警察、コートレイ
辻政信
1961年ラオスで失踪、1971年6月23日参議院予算委員会で二院
クラブ市川房江氏と外務省官房長官との質疑、
潜行三千里、ミートキーナ、
薬物
日本での麻薬・覚醒剤禍、終戦直後のヒロポン時代の再来、
主婦・学生・子供まで蝕む、芸能人の相次ぐ大麻取締法違反の逮捕事件
麻薬患者による幻覚殺人事件、マリファナ、コーク、ハッシシ、LSD
仏教
ワット(僧院)、ポー寺院、パグナム僧院、一時僧、ヨーム(保証人)
托鉢、バーツ(鉢)、ナーガ(大蛇)、タマユット総本山、
ベンチャマボピット僧院(大理石僧院)、
マヌサーナーガマナワ(ラーマ4世の王子の一人:ソムデット・プラ・マハー・
サマナ・チャーオ・クロム・プラヤ・ワチラナーナワローサ)
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