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「ラオス いとしい国」
私が出会った女性たち
前田 初江 著
段々社、2002年4月発行
ISBN4−7952−6519−4
《著者紹介 前田 初江 (まえだ・はつえ)
1946年、静岡県生まれ。慶應義塾大学(通教)卒業。1969年から2001年
までの間に、青年海外協力隊員、ヴィエンチャン日本語補習校教師、JVCボラ
ンティア、JICAシニアボランティアとして4度にわたり8年間ラオスに在住。
調査、取材などでも滞在を重ね、通算30年あまりラオスに関わり続けている。
このほか、インドネシア、タイ、東アフリカなどにも滞在経験がある。
著書に『遥かなるラオス』(時事通信社1977)、訳書に『ラオスの民話』(共訳、
黒潮社1994)、『ブンタノーン短編集』(ラオス青年同盟出版局2000)
(本の紹介文より・発行当時)
⇒「メコンプラザ」での前田初江さん紹介
青年海外協力隊員として1969年に初めてラオスに行って以来、ラオスと30年余り関わりつづけている著者が、昨年(2001年)、JICAシニアボランテイアとしての4度目のラオス生活から帰任後、最初にとりかかり発表した作品が本書。内容は、著者がラオスで知り合い親しく関わった、あるラオス人女性の半生を主にまとめたものだ。
アジア女性文学の翻訳出版に積極的な段々社から前田初江さんが本を出版されるという話は段々社代表の坂井正子さんからも聞いていて、ラオス文学の翻訳紹介に強い関心を持っておられた前田さんだけに、今回新しく出版される本は、てっきり現地作家によるラオス文学の翻訳かと思っていた。本書は、著者が知り合ったラオス人の女性の話をまとめ10年来温めてきた原稿が自費出版として一冊の本にまとめあげられたものであることを後で聞き及び、ラオス人女性の話を通してアジアの知られざる国ラオスとそこに住む人々を知ってほしいと切に感じてきた著者の強い思いを、改めて知った。
ラオスとの関わりが長くたくさんのラオス人と出会ってきた著者に、そこまで印象深く、親しく関わった人とは、果たしてどのような女性なのであろうか?それは、著者がJVCのボランティアとして3度目のラオス滞在の1988年に出会った人で、ヴィエンチャンで屋台でカオプン(米で作った細麺)を売っていた陽気で気さくな女性で、細々と農業をやっていた父と、市場の一角で雑貨や駄菓子を売って日銭を稼いでいた母との間の男2人、女4人の6人兄弟姉妹の4女として1944年ルアンパバーンで生まれたという女性だ。社会主義のラオスの事情も考慮し、本書では「サニット」という仮名で、打ち続いた内乱、革命、経済不況、それらに翻弄されながら数々の苦境をかいくぐり、明るくしたたかに生きてきた彼女の半生が語られている。
父が子供のときに亡くなり、貧しい母子家庭の中で、成績が良かったサニットさんは、ヴィエンチャンにあるラオス一のエリート校のドンドーク師範学校(当時の学校の先生の大部分はフランス人。現ラオス大学教養学部)の入学試験に3番の成績で合格。1964年に学校を卒業して、ルアンパバーンで公務員としての教師になり、22歳の時、5歳年上のタイ人と結婚。彼はサヤブリーでUSAID(アメリカ国際開発局)支援の灌漑プロジェクトで働いていた技師で、週一度サヤブリーからルアンパバーンへ来ていてナイトクラブでサニットさんと出会う。
結婚後7年目に2人に子供ができるが、ラオス国内の政情不安が激しくなり、アメリカ政府の仕事でラオスに住んでいる外国人(タイ人)を国外へ逃がす事に成功はするが、追って自らも子供とともに夫の後を追ってラオス脱出の試みは失敗する。1977年1月、2度目のラオス脱出失敗で、逮捕されヴィエンチャン郊外のサムケー刑務所に入れられてしまう。1年半後出所するが、故郷にも居づらく、教師として学校に戻れるわけもなく、ヴィエンチャンで生きるため、食べるために混乱が続く社会の中で様々な仕事をする。
ラオス脱出の試みの緊迫した場面や、革命前後の社会不安の様子、革命政権樹立後数年の経済社会の混乱の様子に加え、サニットさんのいろんな物の考え方や感じ方など、ラオス語やラオス事情に精通しているだけでなく、サニットさんという年齢が近い同性への理解・信頼を持つ著者でなければ、語ってもらえないような事が綴られている。ラオスの政情や経済社会状況以外に、他にも小学校入学が、手の先が反対側の耳に届けばおよそ7歳だと見当をつけ許可されるという話や、サニットさんの自由闊達できらびやかな青春時代の話、リンサーオ(男女交際の習慣)や結婚前後のいろんなエピソードなど、楽かった話もたくさん語られている。
尚、本書の主な内容はサニットさんが著者に語った半生記ではあるが、他にも著者の1969年以来のラオスとの関わりや、著者自身が感じてきたラオスやラオス人気質についての文章が掲載されている。大らかな心を持ち、陽気でユーモアを言うのが好きで、人に親切でおせっかいやきで、親を大切にし、目上の人を敬い、信心深く、礼儀正しい一方、格好よいのが大好きで、自尊心が強く、自分勝手で図々しく、虚栄心も依存心も併せ持ち、賭け事に熱中し、そして「ボーペンニャン(構いません、なんでもありません)」と人を慰め自らをあきらめるような愉快な人たち、日本では時が慌しく過ぎるのに対し時が緩やかに流れるラオス的な悠長さ、効率を気にしない精神的なゆとり、食事はその質や量より大勢集まって和気あいあい食べる事を重視するなど、ラオスやラオス人の不思議な魅力にあらためて惹かれてしまう。
本書の目次
T ラオスに住んで
1. 1969年〜76年
2. 1988年〜現在
3. ボランティア活動
4. 私の女ともだち
『遥かなるラオス』に登場した女性たちは今・・・
サニットとの出会い
U サニットが語ったこと
1. 足から先に生まれた
2. エリート校へ入る
3. 目から鱗のフランス旅行
4. 結婚相手はタイの人
5. ようやくわが子が授かった
6. 夫を早く逃がしたい!
7. ラオス脱出の試み
8. 「一緒に苦しむのが本当の友」
9. マダム、ハラショー!
10. 夫に二人目の妻がいた
11. モツ入りカオプンを売る
12. 屋台の客あれこれ
13. 息子のこと
14. おんぼろ長屋は最高
V 愛すべき人々
1. ラオス人気質
2. メコンの流れのように
あとがき