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◆浜松市楽器博物館
第5回特別展
シンボルとしての楽器
-聖なる形・祈りの音ー
会期:
・1998年3月24日(火)
~5月10日(日)
講演会:
「神々の音像」
講師:櫻井哲男 氏
(熊本大学教授)
1998年4月25日(土)午後2時
アクトシティ浜松研修交流センター
協力:
国立民族学博物館
野外民族博物館リトルワールド
浜松市博物館
主催:
浜松市
(財)アクトシティ浜松運営財団
・はじめに
(本図録掲載文章全文引用)
楽器は単に「音が出る道具」ではなく、「音を出すための道具」です。人間が何らかの「音」を出す意図を持って作り出した道具です。また、道具には「形」があります。この形にも人間は何らかの意味を持たせました。
音には心地好さ、輝かしさ、不気味さ、不快さなどの感覚的意味があります。形には神の姿、宇宙の原理などを表す視覚的意味があります。人間の生活がまだ神や精霊などの超自然的存在に支配されていた時代から、楽器はこの2つの意味を強く持ち続けてきました。人間の精神文化のシンボルとしての楽器の姿がそこにあります。
今、私たちに最も身近な西洋音楽の楽器は、多くの場合、音楽作品を演奏するためだけの道具でしかないのが事実でしょう。心地好い音のみが残され、形からは意味が削られ、音楽を演奏するための性能のみが追求されてきたのです。
この特別展は、人間が楽器を作り出した原点 ー神観念や価値観、宇宙観などー を主に現代に残る「聖なる形」と「祈りの音」を通して考え、シンボルとしての楽器の姿を紹介するものです。単なる音が出る道具を越えた、人間と楽器の深い絆を、発見していただけることと思います。
平成10年3月4日
浜松市楽器博物館
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浜松市楽器博物館 第5回特別展
『シンボルとしての楽器
ー聖なる形・祈りの音ー』
図録
編集・発行 浜松市楽器博物館
1998年3月
本図録は、1998年(平成10年)3月24日(火)から5月10日(日)まで、浜松市楽器博物館(静岡県浜松市板屋町108-1)で開催された浜松市楽器博物館第5回特別展「シンボルとしての楽器 -聖なる形・祈りの音ー」の解説図録。右記の「はじめに」にあるように、この特別展は、人間が楽器を作り出した原点を、主に現代に残る「聖なる形」と「祈りの音」を通して考え、シンボルとしての楽器の姿を紹介するもので、本書巻末記載の展示楽器リストによれば、国立民族学博物館、野外民族博物館リトルワールド、浜松市博物館、浜松市楽器博物館、個人所蔵の世界各地の楽器155点が展示された。
本書に掲載されている楽器は、展示会での展示楽器よりの一部抜粋となっていて、図録という性格上、楽器の形に重点を置いて、計54点が選択されている。本書掲載の54点の楽器中、使用地域または文化圏がメコン圏地域であるものは、ミ・ジャウン(ミャンマー)、チャケー(タイ)、パッタラー(ミャンマー)、銅鼓(タイ)、コーン・モーン(タイ)、象脚鼓(中国の雲南省など)と6点ではあるものの、本図録の表紙・裏表紙の全面に写真が掲載されている唯一つの楽器は、ミャンマーのパッタラーとなっている。パッタラーについての本文での解説は以下の通り。ちなみにこの展示品のパッタラーは、国立民族学博物館所蔵のもの。
<楽器名>パッタラー 【本書の本文での写真を本ページの下部に掲載】
使用地域:ミャンマー、 主要寸法:全長193cm、 20音、体鳴楽器
室内音楽で使用。普通は船型の胴に竹製音板を並べた木琴だが、これは
胴が伝説の動物ピンサッ・ユーパの姿をしたもの。
ピンサッ・ユーパ
ミャンマーの想像上の動物で、吉祥のシンボルです。パーリ語でピンサッは
「5」、ユーパは「外見」という意味ですが、この名が示すように、象、鳥、馬、
鯉、ホー(伝説上の有角獣)、または、獅子、象、水牛、鯉、あひるの各部分
が合成されて生まれた動物です。普通は象の鼻と牙、ホーの角、馬の脚、
鳥の羽、鯉の尾ビレという組合せと考えられていますが、鹿や龍、獅子、魚の
合成とする説もあるようです。
本書の構成も、展示会での構成と同じく、「精霊の世界」「霊獣への畏敬」「神々との交信」「力・権力・ステイタス」「愛するもの」と5つのセクションに分けられているが、パッタラー(ミャンマー)とともに、ミ・ジュアン(ミャンマー)、チャケー(タイ)は、「霊獣への畏怖」のセクションに分類されている。本書では、『カンボジアやタイ、ミャンマーなど,人々の生活が水と深くつながっている社会では、水を支配する存在への崇拝が見られます。ワニ崇拝もそのひとつで、ワニは水田耕作における豊饒のシンボルであると考えられます。』との解説のもと、それぞれワニという意味にあたる弦鳴楽器のミ・ジャゥン(国立民族学博物館所蔵)、チャケー(浜松市楽器博物館所蔵)が取り上げられている。
「神々との交信」のセクションでは、銅鼓が取り上げられ、展示会では、タイの銅鼓(浜松市楽器博物館所蔵)とラオスの銅鼓(国立民族学博物館所蔵)が展示された。本書での銅鼓の解説は、『中国雲南省やミャンマー
、タイなどに分布する青銅製太鼓で紀元前から存在。祭礼などで打ち鳴らす。表面は浮き彫り文様でおおわれる。鼓面中央の十二光房紋様は打撃点であるとともに太陽崇拝を示し、飛鳥文は「死」や飛び去る「霊魂」を象徴するとも言う。ある地方では蛙は雷神の子どもであるとされ、鼓面の蛙の立体像は雨乞いのためと言われる』と書かれている。同時に、銅鼓を鳴らすミャオ族の写真【中国貴州省凱里】が並べて掲載されている。
浜松市楽器博物館所蔵のコーン・モーン(タイ)は、全長150cmの縦型のゴング・チャイムで、葬儀や火葬の時の合奏で使用される体鳴楽器。ヒマラヤに住むというヒンドゥー教の学芸の神キンナリーの半人半鳥の彫像が、楽器の銅部に施されている。国立民族学博物館所蔵の象脚鼓は、文字通り、象の脚をかたどった太鼓で、日常の生産活動や運搬など、象と共に暮らしている中国雲南省などに住むタイ族の楽器だ。
目 次
はじめに
1. 精霊の世界
秘密の竹笛 虹蛇の神話 聖なるワニ
2. 霊獣への畏敬
ナーガ 蛇 東洋の龍 四神 西洋の龍
亀・ワニ・ジャガー 鳳凰 ピンサッ・ユーパ
3. 神々との交信
銅鐸の謎 雨を呼ぶ 男と女 霊力・魔力
学芸の神 化身
4. 力・権力・ステイタス
崇高なる鷲 巴の宇宙 「モダン」への憧れ
5. 愛するもの
展示楽器一覧
参考文献
あとがき
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