朝日新聞記事 1994年3月15日    

 

  朝日新聞 1994年(平成6年)3月15日(火曜)

 

  不評のタイ米 生産国の言い分

 国産米に長蛇の列ができる一方で、緊急輸入したタイ米は店頭で売れ残ったまま。日本人には慣れない長粒種で、「パサパサしてる」「においが強い」と、人気はいまひとつ。「異物が交じっていた」との指摘も、不評に拍車をかけた。こうした日本側の反応に、輸出元のタイ側では反発が強まっている。

 

 

  「水不足で収穫減少 輸出やめてもいい」 学生ら

 

 【バンコク14日=脇阪紀行】

 「タイ米を食べたくないのなら、日本向け輸出をやめてもいいんじゃないか。他の国が、いくらでも買ってくれる。深刻な水不足で、コメの収穫が減っている時に、わざわざ日本に買ってもらう必要はない」。タイの名門、タマサート大学学生連盟のポンテープ副委員長(22)が、日本への不満をぶちまけた。

 

 日本でタイ米の評判が悪いことは、今月初めに地元マスコミを通じてタイ国内に伝えられた。とくに、国会で、「タイ米の中に、ネズミの死がいが入っていた」との質問が出たニュースは、関係者に衝撃を与えた。ウタイ商業相は「タイ米は、世界中に輸出されているが、他の国から、そんな文句を聞いたことがない。検査、輸送中の事故は、米を輸入した日本の企業、政府に責任があるはずだ」と不快感をあらわにした。

 

 一般市民の間にも、不満の声は強く、あるOL(29)は、「エイズ、売春と、タイのイメージが悪くなっている時に、今度は、コメの問題だ。またか、とうんざりする」と残念そうな表情を浮かべた。

 

 

 「タイ米の利用法 時間かけ慣れて」 専門家

 

 日本の農水省国際農林水産業研究センター(茨城県つくば市)の招きで来日しているプラスート・シティスワン・タイ農業省米穀研究所長は、タイ米の不評について「不幸な事態だ。タイ米が日本のコメ(ジャポニカ種)とまったく品種が違うインディカ種であるということが、日本の消費者に理解されてないことが最大の原因だ」と話す。

 

 「日本のコメと交ぜる場合も、試してみればたやすく適当な割合がわかるはずだが、慣れるまでは時間がかかるのだろう」

 

 タイ米の安全性については「タイの農民はお金がないこともあって、化学肥料や農薬をほとんど使っていません」と指摘する。