社会(犯罪)       

         日本人「蛇頭」事件

                 カンボジア拠点の日本人「蛇頭」による密入国事件   

 

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●警視庁国際捜査課の調べによる密航ルート

 

 ◆中国人のカンボジアから米国への密航ルートは2ルート

(いずれも、密入国が発覚しないよう遠回りをする)

 

 ・ヨーロッパ経由

  カンボジアを出発してベトナム、ヨーロッパ(フランスやイタリアなど数カ国)を経て米国に入国

 

 ・アジア経由

  カンボジアからタイ、香港などを経由して米国に入る

 

 

 

●1997年8月5日

 「毎日新聞」(夕刊)記事

 

 ”日本人「蛇頭」盗難旅券を偽造細工 写真、名前替え何度も使用”

 

 ”密航あっせん組織「蛇頭」カンボジア拠点の実態解明を進める警視庁国際捜査課は、5日までに、米国密航を企てて起訴された同拠点日本人メンバーの男性2人らの偽造パスポートが、紛失や盗難にあったパスポートの写真と氏名だけを取り替えたものであることを突き止めた。

 

 同課はカンボジア拠点が組織的に日本のパスポートを入手・偽造していた疑いが強いとみて捜査を進める。

 

 今年4月、中国人と親子を装って米国に入国しようとした佐藤XX被告(50)=偽造有印公文書行使罪で起訴=らの供述などによると、密入国に成功後、偽造パスポートは再びカンボジアに持ち込まれ、写真と氏名を取り換えて繰り返し利用されていたという。日本のパスポートはビザ免除で入国できる国が多いことや、日本人と中国人の見分けがつきにくく、写真を張り替えてもごまかしがきくことから、蛇頭の間では高額で取引されているという。”

 

 

  1997年8月4日(月)、”親子を装い米国に密入国 日本人「蛇頭」2人逮捕 警視庁 カンボジア拠点にして 他に5,6人活動」という大きな見出し入りの記事が、毎日新聞の社会・事件面を飾った。しかも、日本人を含む蛇頭組織図まで掲載された。この記事の全文は以下の通り。

  ”密入国目的の中国人を「自分の子供」と装って引き連れ、偽造パスポートで米国に入国しようとした日本人2人が、警視庁国際捜査課に偽造有印公文書行使の疑いで逮捕、起訴されていることが3日、分かった。2人は中国人密航あっせん組織「蛇頭」のカンボジア拠点のメンバーで、他にも5,6人の日本人が同じ組織で活動していると供述している。日本人が蛇頭の直轄メンバーとなっている実態が明らかになったのは初めてで、同課は他の日本人メンバーの特定など組織の解明を進めている。”

  ”逮捕、起訴されたのは山形県出身で住所不定、中古車販売業、佐藤XX(50) ▽北九州市門司区XXXX、貿易業、中村XX(59)の2被告。(*注:新聞記事では実名及び住所が明記) 調べに夜と、佐藤、中村両被告は今年4月12日、スペイン経由で米国に入国した際、マイアミ国際空港でそれぞれ日本国籍の「中田仁」「三田仁」名義の偽造パスポートを提示した疑い。この際、2人の子供という偽造パスポートを持った中国人男女3人を同行していたため、密航の手引きが発覚。両被告はマイアミでいったん身柄拘束され、日本へ強制送還後、逮捕された。

  供述などによると、佐藤被告は約2年前から、中村被告は今年春頃から、カンボジアの首都プノンペンを拠点とする蛇頭に加わった。組織は中国人をトップに約20人が3グループに分かれ、それぞれが偽造パスポートの調達密航者の募集密航者の引率・同行を分担。このうち引率・同行を担当するグループの7,8人は佐藤被告らすべて日本人で観光目的の親子を装い、米国に密入国させていたという。不正入国の報酬は一人当たり1,000〜5,000ドル(約12万〜60万円)。入国に失敗した場合は引率を別の日本人メンバーに交代し、成功するまで試みていた。佐藤被告はこれまで密航者を6回手引きし3回成功。こうした「日本人蛇頭」の関与で30人以上を密航させたとみられる。

  蛇頭の日本人メンバーはいずれも50〜60歳代。過去に貿易関係の仕事などを通じて知り合った者が多く、佐藤被告は最近、一時帰国し、英語が話せる知人を勧誘したが断られたという。同課は、取り締まり強化によって日本への入国が難しくなった蛇頭が、国情不安定なカンボジアに新たに拠点を設け、日本以外への密入国を活性化させているとみている。”

 同日8月4日、毎日新聞夕刊では続報として、逮捕された日本人2人と同じ組織に所属していた別の日本人男性3人が、イタリア、フランス、香港の各捜査当局に逮捕されている事が、警視庁国際捜査課の調べで分かったと報じた。この3人は同年春、偽造パスポートを使用して入国しようとした疑いで各捜査当局に逮捕されていたが、いずれも中国人密航者を引率して米国に向かう途中とみられている。

  日本人が直轄メンバーとして関与するカンボジアを拠点とする蛇頭グループの存在を明らかにするきっかけとなった佐藤被告の逮捕であったが、この佐藤被告に対する初公判は、1997年8月5日、東京地裁で開かれ、佐藤被告は起訴事実を全面的に認めた。同被告に対する判決公判は、1997年11月26日、東京地裁で開かれ、金山薫裁判長より「組織的犯行に加わった罪は重い」として、懲役2年6ヶ月(求刑は懲役3年6ヶ月)の実刑判決が言い渡されている。

   参考文献:

    *「毎日新聞」

       1997年8月4日(朝刊・夕刊)、8月5日(夕刊)

       8月6日(朝刊)、9月9日(朝刊)、11月26日(夕刊)

 

    *『蛇頭「密航者飼育」アジト』

         (望月健とジン・ネット取材班、

            小学館文庫、2000年11月発行)