フォトジャーナル  文・写真:youme    「CAMBO.DEAR(親愛なるカンボジア) 本文へジャンプ
        

           第11回 バッタンバンのエイズ問題に取り組む

              Tean Thor Association (Acts of Compassion)

   

 ココンを経由してプノンペンに到着。隣国に居を構えているのに、約1年ぶりの訪問になった。プノンペンの町はアセアンを機にかなり町が整備された様で、交差点に歩行者用の信号があり、信号の待ち時間がデジタルで表示されたり、鋪装された道が増えたのには痛く感動した。

  2003年7月にバンコック国際交流基金文化センターギャラリーでカンボジアのエイズ写真展[URGENT ACTION NEEDED]が開催される。現在このプロジェクト運営と展示プロデュースを担当しているのだが、展示会期中に来場者と地元の活動を結ぶネットワーク作りをしたいと思い、その為に資料集めをするのが第一目的の旅であった。プノンペン滞在中に出会った魅力的な人々は、おいおいこのジャーナルでご紹介するとして、今回はカンボジアのバッタンバン州におけるエイズ問題と、現地で地道な活動を続けているローカルNGOTean Thor Association (Acts of Compassion)】をご紹介したい。

 1990年、カンボジアではほとんどの人々がエイズの事を知らなかった。隣国タイでエイズの脅威が伝えられる中、他人事の様に捉えていた。迅速に蔓延して行くHIVウィルスに対して無防備であった。一部の人が危機を唱えても、地方の村人たちは笑って聞き流し、真剣に捉える人は少なかったと言う。

 
 その後2000年にはHIV感染者率がアジアでも最も高い数値となった。2001年には12,000人がエイズにより死亡。エイズで親を亡くした孤児は3万人。母子感染で5,000人が死亡。2004年までに孤児の数は14万人になるであろうと推定されている。

 ポルポト政権当時に約170万の国民が犠牲になったカンボジアの現在の人口構成は54.8%20歳以下、15歳以上の成人4%がすでにHIVに感染しており、更に毎日100人が感染しているという状況で、カンボジアの未来を担う層に深刻に危機が迫っている。

 中でもカンボジア北西部のタイ国境に近い地域は一番深刻に打撃を受けている。国道5号線はタイに繋がる唯一の流通ルートでもあり、国道沿いの村々で、長距離トラック運転手、タイとカンボジアを行き来する貿易商、兵隊、兵隊上がりの地雷撤去作業に関わる人々から感染が広がったと言われている。

 近年、国際組織が関与しエイズ支援や教育を試み続けているが、気が遠くなる様な業務に直面している。過去に不当な扱いを経験している地方の多くの人々が、外国人や政府関係者らに対して不信感を持っている場合が非常に多く、そうした筋から提供される『新しいアイデア』に対し、多くの人が恐怖感を持っている為、なかなか効果が上がらない。

 村々でようやくエイズの危機が意識されるようになると、エイズに関する知識が乏しい村々では『不治の恥ずべき病』として患者や家族に対する差別が生まれた。家族と言えども受け入れられずに見捨てられる患者が後を立たず、こうした地元の現状からホームケアやコミュニティケアの必要が生まれた。


バッタンバンを去る予定にしていた前日に入ったレストランでレイ・ザップ氏による"Around Battambang"が販売されていた。代金は5ドル。本の収益は全てHIVモンクプロジェクトに当てられると書かれていた。 

この著書でTeann Thor Association(以後TTAと表記)の存在を知り、ディレクターのキロックさんに会う事が出来た。

カンボジアのHIV/AIDS問題に危機感を抱いた僧侶たちと協力し、地域の最前線で活動を続けている。

TTAの取り組みは、国民のほとんどが仏教徒である点、伝統的な治療法を好む地元の人々に配慮した形で行われており、現在は州内の16の寺がこのプロジェクトに関わっている。

 寝たきりのエイズ患者と家族の家を訪ね、エイズとは何か、感染経路、予防やケアについてを説いて行く。恐怖心、羞恥心、排斥的な気持ちを捨て、思いやり、慈愛、人としての尊厳を持って愛すべく家族をケアせよと教えている。

 起き上がる事が可能な患者は寺境内にあるメディテーションセンターに10日間滞在する。そこでは、患者同士が協力しお互いの世話をし、クルー・クメール(古くから人々が信じてきた伝統的な治療法、薬)を治療方法の一つとして取り入れている。かつては立てない、食べれなかったという患者が寺の境内の安らかな環境で過ごして行く間に、精神的に癒され『生きる力』を取り戻すと言う。

このプロジェクトが正式に活動を始めたのは200012月。

  AusAIDSから支援を受けてはじまった。発足当時の講習会には、52人の僧侶(16の寺から3人の僧侶が参加した計算になる)が参加し、エイズ患者を抱える家族と共にどう活動を進めていけるのかを話し合った。 

 宗教的な教えを説くと共に、現実問題としてエイズ教育を行う必要もある。エイズが悪徳故の因果ではない事を教え、エイズ患者を抱える家族や親をエイズで亡くした孤児たちが差別される事のないコミュニティの形成に力を注いでいる。同時にバッタンバン州から離れた小さな村々で性産業に関わる若い女性たちに「あなた自身を守れ」をモットーにHIV/AIDSの知識教育をしている。

 TTAはプロジェクトごとに支援を受けているが、団体としてまとまった援助を受ける事が難しく、効果を上げたプロジェクトを継続していく上で困難と直面している。 

 カンボジア北西部でHIV/AIDS問題と関わり、常に活動の上でリーダーシップをとって来たTTAディレクターのキロックさんのアイデアは地元の人々との長年の関わりから生まれた体と心と土地に染み付いたものであると感じる。

 現在、彼は数人のスタッフ、ボランティアで活動に参加しているディッケンさんと共に、パソコンが一台しかない殺風景なオフィスを拠点に活動している。資料になる冊子や名刺を作っている余裕もないと言う。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バンコックへの戻りを一日延ばし、キロックさんが、メディテーションセンターとホームケアをしている地域へと連れて行ってくれた。メディテーションセンターの看板には、『エイズ』の文字は見当たらなかった。 

 「エイズ患者をケアしているセンターだと特別に強調したくないのです。ここに来る彼等を苦しさから解放したい為です。見て下さい。簡単な造りでしょう。可能ならば施設を増やしたいのですが、今は無理です」 藁葺の長屋の様な造りのセンターの周りには、美しい花が咲きほこっていた。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、とある田舎家に案内された。藁葺屋根の開放式の居間に痩せ細った女性が横になっていた。周りに家族や近所の人々が集まる中、一人の青年が手厚く女性を介護している。

 キロックさんは「彼女は長くてあと2、3日の命でしょう。彼女が亡くなった後、葬儀の準備をする余裕もないのですよ。カンボジアでは生きるのも死ぬのも難しいですね」と言い、女性には「子ども達の事は心配しなくていい」と伝えていた。4人の息子たちが彼女に優しく触れ、心配そうに見守っていた。

 ひと頃死に至る病と扱われていたエイズだが、薬を手に入れる事が可能な先進国では、感染後もウィルスとうまく付き合いながら日々の生活を続ける事が可能になったと言われている。

 しかし、カンボジアでそれが叶うのはいつの話しになるのだろうか。

                    写真と文: youme.


 

TTA支援協力のお願い】

 日本からカンボジアを支援したいと考えている方がいたら、今回取り上げたTTAの活動に是非目を向けて下さい。「まず現場を見に来てもらいたい。でなければ問題の本当の姿を決して理解する事は出来ないでしょう」と言ったキロックさんの真摯な言葉に一人でも多くの方が応えて下さる事を願っています。

 ■TTAの活動に関するお問い合わせはメールで筆者youme.までお問い合わせ下さい。

 



    [文中の写真展についてのご案内]

   urgent Action Needed

    ~カンボジア エイズ患者たちの日々~

           by 後藤勝UAプロジェクト

  今回7月1日から12日までバンコック日本文化センターにおいて開催される写真展会場では、エイズ患者のみなさんが書いたメッセージと共に撮影された等身大のポートレイトを20点展示します。(展示写真プリントで技術的サポートをして下さったエプソン・タイランド社のご協力により今回の展示が実現しました。)

 同時に150点程のスライド上映も行います。

 7月10日夜には、当プロジェクト主催者の後藤勝、バッタンバン州立病院感染病棟で主任を勤めるスセップ医師、HIV/AIDS問題を取り上げて幅広くアジアで活躍を続けるジャーナリスト(アジアワークステレビジョン兼タイ外国人記者クラブの副会長)のジィニー・ハラシー氏参加のパネルディスカッションを企画しています。

 会期中に来場された方々が情報にリンクし、地元の活動と繋がっていける場にしたいと思っています。

    7/1-12(6日を除く) 9:00-19:00 

  ■オープニング 7/1 19:00~(ご自由にご参加下さい)

    ■国際交流基金バンコック日本文化センター・アートギャラリー

         Serm-Mit Tower 10th Fl., 159 Sukhumvit Soi21, Bangkok

        http://www.jfbkk.or.th

    ■入場無料

    ■国際交流基金バンコック日本文化センター 主催

    ■エプソンタイランド社 協賛

    ■Tel: 0-2260-8560-4, Fax: 0-2260-8565

        お問い合わせは 古屋さん、森山さん、ワッタナーさんまで。