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カンボジアでは近年、自家用車を所有する人が急増している。その急増ぶりは半端ではない。特に都市部の人々は、隣が買ったからうちも…、という様な勢いである。カンボジアで車と言えば、白のカムリ。白タクと呼ばれる車はほとんどがそうだし、中流層の人々が所有しているのも白かグレーのカムリである。隣にならって車種も右倣えしていて、カンボジアらしいと妙に納得してしまったりする。
いつもの様に、オンラインでカンボジアのニュースを見ていたら、目が点になった。と言うのも「カンボジアで初の車生産...」と題された記事を目にしたからだった。カンボジアの車社会に、可愛らしく突如現れたのが、その名も「アンコール 2003」という車。
カンボジアを訪ねる度に思う事は、みな器用で、リサイクル上手という事なのだが、まさか、車を作ってしまうとは…、と早速、好奇心にあおられてこの記事の主を訪ねてみることにした。
民家が立ち並ぶ一角に、ニアン・ポレットさんの工場がある。しかし、実は、洗車ショップである。規模は想像していたものの、市内のいたるところで見かける洗車ショップとなんらかわりはない。洗車ショップと言っても、全て人の手による洗車なので、おおがかりな設備が整っている訳でもない。私も、バイクに乗っていた時には、よく洗車ショップを利用していたものだ。

Angkor2003に乗るリャッケナーさんとポレットさん
しかし、その「工場」の真ん中に置かれたアンコール2003を間近にみた時には、その出来の素晴らしさに圧倒されてしまった。完成までに4ヶ月を費やし、制作費は900USドル。 4変速で最高スピードは時速60キロ。
100CCのモーターバイクエンジン搭載で、コンパーチブル。解体した中古のバイクや車からパーツを用い、細かい所には、赤ちゃんのミルク缶をリサイクルして使ってたりする。しかし、これ以上に驚いたのは、この車が誕生した逸話と、それをデザインしたのが、18歳になるポレットさんの娘、リャッケナーさんだったという事。

(写真右) Angkor2003のリアパネルにアンコールワットが…。
夕方になると川沿いに出かけていくポレットさんは、「川沿いまでいける車があったらなぁ…」と、度々家族に話していた。「私がデザインを考えたら、車を作ってくれる?」と言ったリャッケナーさんの言葉には、適当に答えていた。リャッケナーさんは、父が約束をしてくれたものだと信じて、一生懸命にデザインを考え始めた。その後、リャッケナーさんのデザインが誕生。それを見たポレットさんに二言は無かった。それから試行錯誤を繰り返し、4ヶ月を経て、アンコール 2003が誕生。それがアンコール2003誕生の逸話だった。車を作るお父さんも素敵だが、娘との約束を守る事に全力を尽くす父と言うのはもっと素敵だ。

この記念すべき一台が完成し、次回作になるであろう車の基礎を、スタッフ数人が組み立てていた。勿論、次回作のデザインもリャッケナーさんによるもの。全くの独学で、デザインのアイデアも自然と湧いてくるという彼女の才能は、やっぱりポレットさんから受け継いでいるのだろう。
(写真左)次回作は4人乗りになるらしい。基礎を組み立てるスタッフとポレットさん
「この車は、カンボジアで初の“手作り”の車です。もしか、先進国で、車を作ったと言ったら、一大事なんでしょうけれど、この国では、あんまり興味を持ってもらえません。もしか、資金がもっとあったら、生産ラインを確立し、人々の手に届く様な価格と量産が叶います。それが次のステップでもあります」と無口な職人肌のポレットさん。
(写真右) 工具とAngkor2003の商標が飾られている。
何か新しいものを作り出す人というのは、人々が信じない事を信じてやり遂げる。彼だけではなく、同じ意思を受け継いでいる娘さんもそれを支えてる。こうした夢が、実現する時代がカンボジアに来ている。ポレットさんが、カンボジアのヘンリー・フォードと呼ばれる日が、いつか必ず来るだろう。
写真と文:
youme.
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